IPv4 over IPv6とは?特徴やメリット、注意点、利用方法をわかりやすく解説!

インターネットの通信速度が遅いと感じられるのであれば、それはIPv4を使っているからかもしれません。IPoEによりIPv6で接続すれば速くなる可能性もありますが、現在のインターネットはIPv4とIPv6が混在しています。そこで注目されているのが、IPv4 over IPv6です。

今回は、IPv4 over IPv6の概要をはじめ、メリットや注意点、利用方法などをわかりやすく解説します。

IPv4 over IPv6とは

IPv4 over IPv6とは、IPv6環境でありながらIPv4が利用できる接続方式です。

IPv4によるインターネット接続には、一般的にPPPoE方式が使われています。NTTの光回線を使っている場合は、自宅からインターネットまでの間に、NTTのネットワーク(NGN網)から各プロバイダへ接続する必要があります。PPPoE方式では、NGN網とプロバイダの間に網終端装置(PPPoE終端装置)が必要です。しかし、この網終端装置がボトルネックとなり、速度低下が発生しています。

これに対し、IPv4 over IPv6はIPv4のカプセル化によりIPv6で通信できるため、網終端装置を使わずにインターネット接続が可能です。

◇IPv4とIPv6

「IP」とは「Internet Protocol」の略で、インターネットへ接続する通信規約(プロトコル)です。IPv4とIPv6は、それぞれIPのバージョン4と6にあたります。

IPでは、データをパケットと呼ばれる単位に分割して、バケツリレー式で送ります。その際の送り先を区別するために必要なのがIPアドレスです。

IPv4で使われるアドレスは、32桁の2進数です。これを8桁ごとに区切り、「192.168.1.1」のように10進数で表記します。IPv4アドレスは約43億個ありますが、近年ではインターネットの普及によりアドレス不足が顕著になっています。

IPv6は数が不足するIPv4の問題を解決すべく、1990年代後半に誕生しました。IPv6アドレスは128桁の2進数で、16桁ごとに区切り、「ABCD:EF01:2345:6789:ABCD:EF01:2345:6789」のように16進数で表記されます。IPv6では約340澗(かん)個(3.4×10の38乗)のIPアドレスが用意されています。

IPv4 over IPv6の変換方式

IPv4 over IPv6では、IPv6でもIPv4で通信できるようにするため、パケットを変換する技術が必要です。ここでは、変換方式について2つ紹介します。

◇トランスレーション

トランスレーションとは、IPv4ネットワークとIPv6ネットワークの間に、トランスレータを設置して、IPv4のパケットヘッダのIPアドレスを、IPv6へ変換する方式です。小包の荷札を張り替えて、転送するイメージに近いでしょう。

トランスレータが変換してくれるため、相手の通信プロトコルがIPv4かIPv6かを考えなくても通信できる点がメリットです。

◇トンネリング

トンネリングは、機器やソフトウェアによりIPv4のパケットをIPv6でカプセル化して、IPv6環境でも通信できるようにするものです。宛先がIPv6ではない場合や、IPv6ネットワーク同士が直接つながっていない場合でも通信ができます。

トランスレーションでは小包の荷札を張り替えていましたが、トンネリングは小包をそのまま別の箱に入れて転送するイメージです。

IPv4 over IPv6の通信技術

現在のIPv4 over IPv6サービスでは、トンネリングによる変換が一般的です。トンネリングにはさまざまな通信技術があります。ここでは代表的な技術を3つ説明します。

◇4rd/SAM

4rd/SAMは、自宅のルーター(CEルーター)でIPアドレスを変換(NAPT処理)します。ルーターを再起動した際には、IPv4アドレスの再割り当てやポート開放が可能な点が特徴です。ただし、開放できるポート番号には制限があります。詳しくはのちほど説明します。

◇MAP-E(Mapping of Address and Port with Encapsulation、RFC 759)

MAP-Eも、CEルーターでIPアドレスを変換します。また4rd/SAMと同様に、ルーターを再起動した際には、IPv4アドレスの再割り当てやポート開放が可能ですが、やはり開放できるポート番号には制限があります。

◇DS-Lite(Dual-Stack Lite、RFC 6333)

DS-Liteでは、IPアドレスの変換はプロバイダの設備(CGN装置)で変換します。4rd/SAMやMAP-Eとは異なり、IPv4アドレスの再割り当てやポート開放はできません。

最後に、これら3つの特徴を表にまとめておきます。

4rd/SAMMAP-EDS-Lite
NAPT処理CEルーターCEルーターCGN装置
IPアドレスの再割り当て×
ポート開放×

IPv4 over IPv6のメリット

IPv4 over IPv6を利用すると、さまざまな利点があります。ここではメリットを2点紹介します。

◇IPv4とIPv6の両方で通信ができる

現在のインターネットはIPv4とIPv6が混在しており、IPv4のコンテンツも多く存在します。IPv6ではIPv4のコンテンツへはアクセスできませんが、IPv4 over IPv6であれば、IPv4コンテンツの手前でIPv6のパケットがIPv4へ自動変換されるため、まるでそれぞれが自動的に切り替えられているようなイメージでアクセスできます。

◇通信が安定している

最近では、通信の混雑を避けるために、IPv4ではPPPoE方式、IPv6ではIPoE方式が使われています。しかし、先ほども説明したように、PPPoE方式では網終端装置が使われるため、トラフィックの増加により速度低下が発生しています。

IPv4 over IPv6では、混雑しないIPoE方式を利用しつつIPv4へも接続できるため、安定した通信が利用可能です。

IPv4 over IPv6を利用する方法

IPv4 over IPv6を利用するには対応プロバイダとの契約と、対応ルーターが必要です。それぞれについて説明します。

◇IPv4 over IPv6対応のプロバイダを選択する

IPv4 over IPv6を利用するには、対応可能なプロバイダを選ぶ必要があります。IPv4とIPv6に対応しているからといって、IPv4 over IPv6にも対応しているとは限らないため注意が必要です。

対応のプロバイダをいくつかピックアップしましたので、参考にしてください。

プロバイダサービス名通信方式
@nifty光V6プラス
OCNバーチャルコネクト
MAP-E
MAP-E
So-net光プラスV6プラスMAP-E
ぷらら光ぷららv6エクスプレスMAP-E
OCN光OCN v6アルファMAP-E
エキサイトMEC光transixDS-Lite
IIJmioひかりIPoEオプションDS-Lite

※2023年2月時点

◇対応ルーターの用意をする

ルーターもIPv4 over IPv6に対応したものを用意する必要があります。通信技術によってルーターも異なるため、プロバイダがどの通信技術を使っているのかをよく確認しましょう。

通信技術対応ルーター
MAP-ENTT東西のホームゲートウェイ
v6プラス対応ブロードバンドルーター
DS-LiteBuffalo WXR-1900DHP
Cisco C1111-4P
ELECOM WRCシリーズ
Huawei WS325
IIJ SEILシリーズ
I-O DATA WN-AX1167GR

※2023年2月時点

IPv4 over IPv6を利用する際の注意点

IPv4 over IPv6の利用には、いくつか注意すべき点があります。ここでは2点を紹介します。

◇固定IPが利用できない

IPv4 over IPv6はグローバルIPv4アドレスを複数ユーザーで共有して使用します。そのため、1人に1つグローバルIPv4アドレスを割り当てる固定IPは利用できません。ただし、プロバイダによっては、オプションで固定IPが使える場合もありますが、対応プロバイダは多くありません。

これにともない、Linux kernel・Solaris・AIXといったSCTPを利用するサービスも使えないため、気を付ける必要があります。

◇ポート開放制限がある

通信技術にもよりますが、IPv4 over IPv6はポート開放に制限があります。4rd/SAMとMAP-EはグローバルIPv4アドレスだけでなくポートも共有しているため、プロバイダから割り当てられたポートのみが開放可能です。したがって、仮想専用ネットワークなどのPPTPやVPN、オンラインゲームなど、特定のポートを使用する場合は使えないことがあります。DS-Liteは先ほども説明したように、そもそもポート開放ができません。

ただし、固定IPをオプションで用意しているプロバイダであれば、ポート開放も制限なく行なえるようになります。通常であればポート開放できないDS-Liteについても、同様にポート開放可能です。

通信技術ごとに、固定IPオプションの導入も含めたうえでの固定IPとポート開放の可否を表にまとめておきます。

4rd/SAMMAP-EDS-Lite
固定IP
ポート開放

まとめ

IPv4 over IPv6は、IPv4で通信上の問題となっていた網終端装置を必要としないため、安定した通信が利用できます。利用するには、対応プロバイダの選択と対応ルーターの用意が必要です。

プロバイダによって通信技術が異なり、対応ルーターや制限事項も異なるため、プロバイダを選ぶ際は通信技術も確認しておきましょう。

「令和2年度第3次補正 事業再構築補助金により作成」