IPoE(IPv6)とPPPoE(IPv4)を併用するメリットや方法を詳しく解説!

「IPoE」や「PPPoE」は、インターネットを快適に利用するための重要な接続方式です。聞き慣れない方が多いかもしれませんが、この2つの接続方式を理解して両者を併用することで、インターネットの速度改善など、より快適に利用できる場合があります。

今回は、IPoE(IPv6)とPPPoE(IPv4)の基礎知識、IPoE(IPv6)とPPPoE(IPv4)を併用するメリット、具体的な導入手順などを解説します。

IPoE(IPv6)とPPPoE(IPv4)とは?

まずは、IPoE(IPv6)とPPPoE(IPv4)について解説します。

◇IPoE(IPv6)とは?

IPoEとは「Internet Protocol over Ethernet(イーサネット上のインターネットプロトコル)」の略で、IPv6によるブロードバンド接続方式の一つです。従来利用されていたPPPoEに代わる次世代の接続方式として利用されています。

IPv4は総アドレス数が約43億個しかなく、アドレスの枯渇が問題となっていました。しかし、IPv6は総アドレス数が340澗(かん)個も用意されており、アドレス不足を解決できます。

また、IPoEはLANと同じ仕組みのため、PPPoEのようなID・パスワードによる認証処理が不要で、シンプルな接続が可能です。

さらに、PPPoEで必要な網終端装置がIPoEでは不要なため、ボトルネックが生じません。そのため、PPPoEと比べて通信速度が高速です。

ほかにも、IPv6ではセキュリティや、QoS(Quality of Service)といったサービス品質などの機能が強化されています。

◇PPPoE(IPv4)とは?

PPPoEは「Point-to-Point Protocol over Ethernet(イーサネット上のポイント・ツー・ポイントプロトコル)」の略で、ブロードバンド接続方式の一つです。インターネット接続が電話回線だった頃に使われていたPPP(Point-to-Point Protocol)というプロトコル(通信規約)を、イーサネット上でも使えるようにしたもので、ID・パスワードによるユーザー認証が必要です。認証によりプロバイダと接続され、プロバイダからIPアドレスの割り当てを受けます。

PPPoEは、NTTのネットワークとプロバイダとの接続部分に網終端装置を設ける必要があります。網終端装置は同時に接続できる数に上限があるため、通信が増えると速度が低下することが欠点です。

先述のとおり、IPv4はアドレスの数が約43億個しかありません。IPv4が定められた当時はこれで足りるとされていましたが、急速なインターネットの発展にともなってアドレス不足が顕著になり、IPv6への移行が求められています。

IPoE(IPv6)とPPPoE(IPv4)それぞれのメリット

IPoE(IPv6)とPPPoE(IPv4)のメリットをそれぞれ解説します。

◇IPoE(IPv6)のメリット

IPoE(IPv6)のメリットとしては、まずアドレスが多い点が挙げられます。現在、私たちの身の回りではクラウドサービスが盛んに利用されています。これらのサービスにはグローバルIPアドレスの割り当てが必要で、IPv4では増加するクラウドへの割り当てが難しくなっていました。しかし、IPv6によりクラウドサービスだけでなくあらゆる機器へのグローバルIPアドレスの割り当てが可能になります。

また、セキュリティも強化されています。盗聴や改ざんから通信を守るIPsec(Security Architecture for Internet Protocol)という通信内容を暗号化するセキュリティ技術が、IPv6では標準機能の一つです。IPv4でもIPsecの技術自体はありましたが、標準機能ではありませんでした。

ほかにも、ユーザー認証が不要のためシンプルに接続できる点や、ネットワークサービス品質の尺度となるQoS(Quality of Service)機能が強化されたことなどがメリットです。

◇PPPoE(IPv4)のメリット

PPPoE(IPv4)のメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。まず、IPv4はIPv6と異なり、IPv4にはすべてのプロバイダが対応しています。ルータなどの各種機器や、Webサイト、オンラインゲームなどでも、IPv6では利用できない場合もありますが、IPv4であれば利用できるため、汎用性が高いといえるでしょう。

ほかにも、IPv4はアドレスの数が限られているため、IPv6よりもネットワーク管理が容易です。

IPoE(IPv6)とPPPoE(IPv4)を併用する理由

IPoE(IPv6)とPPPoE(IPv4)を併用すると、IPv4とIPv6を両方利用できます。IPoEはPPPoEと比べて接続がシンプルで速度も速いため、両者を併用する意味があるのかと思う方もいるかもしれません。しかし、場合によっては併用が必要になる理由があります。

理由1: IPv4のみに対応しているアプリケーションやサービスが存在する
現在もインターネット上には、PPPoE(IPv4)にしか対応していないウェブサイトやサービスが存在します。
IPoE(IPv6)だけでは、これらのPPPoE(IPv4)に対応していないサービスへのアクセスが難しくなります。

理由2: IPの固定(固定IP)ができない場合がある
固定IPは、Webカメラやサーバーなど外部からデバイスにアクセスする場合などに求められることがあります。
しかし、IPoE(IPv6)では固定IPの割り当てができない場合があります。オプションで固定IPが使えるプロバイダもあるものの、あまり多くありません。

理由3: 開放できるポートの制限がある場合がある
オンラインゲームなど、サービスによっては、ポート開放が求められる場面があります。
IPoE(IPv6)では、ポート開放できる番号が限られています。そのため、必要なサービスのポートが開放できず、利用できない場面もでてきます。
なお、上述の固定IPのオプションを提供しているプロバイダの場合、ポートの開放も制限なく可能です。

IPoE(IPv6)接続とPPPoE(IPv4)接続を併用する方法

IPoE(IPv6)とPPPoE(IPv4)を併用するには、具体的にどのような手順が必要なのでしょうか。ここでは、プロバイダの選び方のほか、ルータやHGW(ホームゲートウェイ)の設定方法を解説します。

◇プロバイダを選ぶ

IPoE(IPv6)とPPPoE(IPv4)の併用は、どこのプロバイダでも対応しているわけではありません。プロバイダのなかにはIPv4のみに対応しており、IPv6には対応していないところもあります。IPv6はIPv4とはプロトコルが異なるため、IPv6に対応したネットワーク機器などが必要です。

また、IPv6には対応していたとしても、IPv4との併用に対応していないプロバイダもあります。この点をあらかじめよくプロバイダに確認をしておく必要があるでしょう。併用する場合は料金が変わる可能性もあるため、料金体系も併せて確認しておくことをおすすめします。

◇ルータで対応する

IPoE(IPv6)とPPPoE(IPv4)を併用する場合、ルータにより対応する方法とHGW(ホームゲートウェイ)で対応する方法があります。

まず、ルータで対応する方法を説明します。終端装置がHGWではなくONU(Optical Network Unit:光回線の終端装置)の場合にはこちらの方法を使うとよいでしょう。

ルータで併用設定する場合、IPoEに使用するルータのほかに、PPPoEで使用するルータを同一ネットワーク内に共存させる必要があります。手順は次のとおりです。

  1. IPoE用のルータは、IPoE用の設定を行ないます。IPoEのため、IDやパスワードは必要ありません。プロバイダによってtransixやv6プラスなどの通信方式があるため、プロバイダに合わせた設定を行なってください。また、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol: IPv4ネットワークにおいて通信用の基本的な設定を自動的に行なうためのプロトコル)の範囲をPPPoE用ルータのIPアドレスやDHCPとかぶらないように設定します。例えば、ルータのIPアドレスを192.168.1.1、DHCPの範囲を192.168.1.3から192.168.1.100までにすることが考えられます。
  2. IPv6で通信できることを確認します。
  3. PPPoE用ルータをルータモードにしてPPPoE用の設定を行ないます。PPPoEのため、IDやパスワードの入力が必要です。ルータのIPアドレスやDHCPは1で設定した範囲とかぶらないようにします。1.で紹介した例でいうと、ルータを192.168.1.2、DHCPの範囲を192.168.1.101から192.168.1.200などにすると重複しません。
  4. 機器同士の接続は、IPv4でつなげたい機器をPPPoE用ルータに接続し、それ以外の機器をIPoE用ルータに接続します。PPPoE用ルータのWANポートはIPoE用ルータのLANポートへ接続し、それぞれのLANポート同士をもう1本接続します。ここが通常の接続と大きく異なる点です。IPoE用ルータのWANポートはONUに接続します。

◇HGWで対応する

次にHGWで対応する方法を説明します。HGWのほかに、PPPoEで接続するためのルータが必要です。手順はルータで対応する場合とほとんど変わりません。

  1. IPoEの契約をしていれば、基本的にHGWには何も設定しなくても、レンタルした時点でつながっているはずです。また、DHCPの範囲をPPPoE用ルータのIPアドレスやDHCPとかぶらないように設定します。例えば、ルータのIPアドレスを192.168.1.1、DHCPの範囲を192.168.1.3から192.168.1.100までにすることが考えられます。
  2. IPv6で通信できることを確認します。
  3. PPPoE用ルータをルータモードにしてPPPoE用の設定を行ないます。PPPoEのため、IDやパスワードの入力が必要です。また、ルータのIPアドレスやDHCPをHGWとかぶらないように設定します。1.で紹介した例でいうと、ルータのIPアドレスを192.168.1.2、DHCPの範囲を192.168.1.101から192.168.1.200にすると重複しません。
  4. 機器同士の接続は、IPv4でつなげたい機器をPPPoE用ルータに接続し、それ以外の機器をHGWに接続します。PPPoE用ルータのWANポートはHGWのLANポートに接続し、それぞれのLANポート同士をもう1本接続します。

まとめ

オンラインゲームの利用などで、ポート開放やIPアドレスの固定を行ないたい方もいるでしょう。しかし、IPoE(IPv6)ではそれらができない場合もあります。そんなときに便利なのが、PPPoE(IPv4)との併用です。併用により、IPoE(IPv6)とPPPoE(IPv4)それぞれのメリットを享受できます。

ただし、併用するにはネットワークに関する知識がある程度必要です。今回の記事などを参考に、併用可能な環境を構築してみてください。

令和2年度第3次補正 事業再構築補助金により作成