SIPサーバーとは?仕組みや機能、SIPとの違いも解説!

SIPサーバーとは、インターネット経由で他の端末との電話やメッセージのやり取りを可能にするサーバーのことです。しかし、SIPサーバーがどのように他の端末と接続しているのか、その仕組みを理解している人は多くありません。

この記事では、SIPサーバーの機能や仕組みから、SIPとの違いまで、さまざまなポイントからSIPサーバーについて解説します。

そもそもSIPとは?VoIPとの違い

「SIP」と「VoIP」は、どちらもインターネットを介した電話やメッセージのサービスに使われている仕組みです。しかし、2つの機能は大きく異なり、間違って覚えている人も少なくありません。ここでは、SIPとVoIPの特徴や役割を解説するので、2つの機能の違いをしっかりと身につけましょう。

◇SIPとは?

SIP(Session Initiation Protocol)とは、複数の端末をつなぐ通信プロトコルのことで、通信経路を確立する機能を持ちます。例えば、AからBへIP電話をかけた場合、まずSIPによって端末同士の通信経路を確立します。そのあとに、音声によるデータのやり取りが可能になり、通話状態へと移行します。

また、SIPは電話の発着信だけでなく、保留や再開、切断などの処理も行ないます。そのため、SIPはIP電話における「呼制御」の役割を担っており、SIPの働きがなければIP電話は適切に稼働できません。 しかし、SIPにはデータを伝送する機能はありません。SIPの機能は、端末同士をつなげる機能に限られてます。音声や映像のやり取りをするためには、他のデータ伝送プロトコルが必要となり、SIPだけで通信ができると誤解しないように気をつけましょう。

◇VoIPとは?

VoIP(Voice over Internet Protocol)とは、IPネットワークを用いた音声通話やビデオ通話などを可能にする技術の総称です。IP電話や通話アプリなどは、VoIPがベースとなって設計されており、「VoIPアプリ」と総称されることがあります。

VoIPのおもな機能は以下の3つです。

1.音声データの圧縮や伸張
2.相手の端末への送信
3.伝送された音声データの復元

この3つの機能を繰り返すことで、相手とリアルタイムで通話できます。

また、SIPはVoIPの仕組みの1つとして機能しており、音声データを送りたい相手との通信経路を確立する役割を担っています。つまり、VoIPの機能の前後にSIPの機能が働いており、VoIPを正しく稼働させるためにはSIPは欠かせないプロトコルです。

SIPサーバーとは?

「SIPサーバー」とは、SIPを利用し音声通話の制御を行なうサーバーのことです。ここでは、端末間のリアルタイム通信に欠かせない、SIPサーバーの特徴やメリットを解説します。

◇SIPサーバーの特徴

SIPサーバーは、SIPの機能を利用し、音声通話の制御を行なうサーバーです。以下の4つのサーバーと機能によって、IP電話の発着信や保留などのIP-PBX機能を制御します。

・プロキシサーバー:端末からの通信の受信・転送をする
・レジストラサーバー:ロケーションサーバーに相手の情報を登録する
・ロケーションサーバー:相手の電話番号やIPアドレスなどを保管する
・リダイレクトサーバー:プロキシサーバーに代わって通信を転送する

このように、各サーバーがそれぞれの機能を発揮することで、スムーズな通話を可能にしています。

IP電話の制御を行なう似たシステムとして、オフィスなどで使われている「IP-PBX」が挙げられます。IP-PBXとSIPサーバーは、設備の成り立ちから次のような違いがあります。

・IP-PBX:電話線を用いた通信制御をIP電話に対応させたもの
・SIPサーバー:SIP機能(端末同士の通信経路を確立する機能)を汎用サーバーに実装したもの

IP-PBXとSIPは相性が良く、IP-PBXの利便性を高めるためにSIPが活用されている場合があります。そのため、近年ではSIPサーバーを単体で用意する必要性が少なくなり、SIPを搭載したIP-PBXが使われるケースも増えています。

◇SIPサーバーのメリットは?

SIPサーバーのメリットとして挙げられるのは、設置の容易さです。SIPサーバーは、インターネット接続に必要なLANケーブルだけで利用できるため、電話線の配置工事などが必要ありません。さらに、他のプロキシーサーバーなどを含む全てのサーバーや端末と無線接続できるので、オフィス内の配置を自由に考えられます。

また、SIPサーバーと接続する端末は、インターネットに接続可能でマイクとスピーカーが搭載されているものであれば、基本的にどのような端末でも使えます。手持ちのスマートフォンや自宅のパソコンでもSIPサーバーを通せば、会社の電話番号を使って発信できます。そのため、リモートワークや外回り中など、場所を問わずにオフィスからの電話対応が可能です。

さらに、拡張性の高さもSIPサーバーのメリットに挙げられます。繁忙期だけコールセンターの人員を増やすなど、限定的に通話設備を拡充したい場合にも便利に使えます。

SIPサーバーを使用するためには?

SIPサーバーは利便性や拡張性が高く、従来の電話サービスよりも快適な通話環境を構築できます。ここでは、SIPサーバーの構築や必要になるものを紹介するので、SIPサーバーの設置を考えている人は参考にしてください。

◇必要になる機械を準備する

SIPサーバーは、「ソフトウェアタイプ」と「ハードウェアタイプ」の2つがあり、タイプによって必要となるものが異なります。そのため、タイプに応じた機械を用意する必要があります。

ソフトウェアタイプのSIPサーバーで必要となるものは、サーバーとして使うパソコンです。通信量の多いオフィスでは処理速度の高いものや、高負荷に耐えられる機器が必要です。レンタルサーバーなどを利用し、オフィスの状況に合わせて最適なサーバーを用意しましょう。

さらに、ソフトウェアタイプの場合は、インストールするSIPサーバー用のソフトウェアも必要です。用意したサーバーに専用のソフトウェアをインストールすることで、SIPサーバーとしての機能を開始します。また、サーバーだけでは通話ができないため、端末となるパソコンやスマートフォンも必要です。

ハードウェアタイプは、SIPサーバーの機能がハードウェアと一体化しています。そのため、ハードウェアタイプの場合は、さらに電話機を購入しオフィスに設置するだけで、IP電話が使えます。

また、どちらのタイプでも必要となるのが、LANケーブルやルーターなどのインターネットに接続するためのアイテムです。SIPサーバーはインターネットを介して通話する機能なので、インターネット接続に必要なアイテムも忘れずに用意しておきましょう。

◇ソフトウェアタイプとハードウェアタイプ

上記で触れたように、SIPサーバーにはソフトウェアタイプとハードウェアタイプの2つに分けられます。2つのSIPサーバーには、次のような特徴や違いがあります。

・ソフトウェアタイプ:サーバーを用意してパソコンやスマートフォンを端末として使う
・ハードウェアタイプ:サーバー機能を搭載したPBXとPBXに接続可能な電話機を使う

ソフトウェアタイプは端末の制限がなくさまざまな端末を使える特徴があります。

ハードウェアタイプは、使用する端末は限定されますが、他の機器を用意する必要がなくなります。どのタイプにもメリットがあるため、コストや環境に合わせて扱いやすいタイプを選びましょう。

SIPサーバー以外のシステム

SIPサーバーは、インターネットを利用した快適な通話環境を作れます。しかし、SIPサーバーが通信障害などでダウンしてしまうと、オフィス全体の電話機能がつながらなくなってしまいます。そこで、トラブルに強い通話環境を構築できるクラウドPBXを紹介します。

◇クラウドPBXとは?

クラウドPBXとは、オフィス内で電話回線の管理に使われていたPBXをインターネット上から使えるようにした機能です。SIPサーバーと同様の機能を果たすため、クラウドPBXを利用することで、さまざまな端末から内戦・外線の発着信が可能になります。

クラウドPBXの特徴は、インターネット上で通話機能の制御を実現します。社内にSIPサーバーや専用の端末を用意する必要がないため、場所やコストの節約ができます。また、工事が必要ないので開通までの時間が短く、環境整備の手間や時間を省けることもメリットです。

また、クラウドPBXのメンテナンスは提供会社が行なうため、利用者が管理することがありません。そのため、導入後の手間やコストが発生しにくく、専門知識がなくても導入可能です。

まとめ

SIPサーバーは、SIPの機能を利用しやすくするために、サーバーに通話機能を搭載したものです。特に、SIPサーバーを用いることで端末に制限がなくなり、場所を選ばずに内線・外線が使えます。そのため、SIPサーバーを上手くオフィスに取り入れることで、業務の効率化やリモートワークなどの多様な働き方を実現できます。

また、SIPサーバーだけでなく、クラウドPBXにも注目が集まっています。クラウドPBXは、SIPサーバーの弱点を補ったり、手軽に使えたりすることから導入する企業が増えている機能です。SIPサーバーだけでなく、クラウドPBXなどの機能にも注目し、最適な通話環境を整えましょう。

令和2年度第3次補正 事業再構築補助金により作成