クラウドPBXとはどのようなサービス?通常の電話サービスとの違いやメリット・デメリットを紹介!

内線通話は、会社で特に意識することなく使用していると思いますが、PBX(Private Branch exchange)という装置によって実現されています。従来のPBXは装置を社内に設置して運用する必要がありましたが、最近では装置が不要なクラウドPBXと呼ばれるサービスが魅力的だといわれています。新たに電話の設置や機器の入れ替えで、クラウドPBXの利用を検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、クラウドPBXにはメリットもデメリットもあるため、注意が必要です。そこで今回は、クラウドPBXとはどのようなサービスなのか、PBXとの違いやメリット・デメリットについて解説します。

クラウドPBXとはどのようなサービス?

企業には電話機が多数あり、これらの電話機同士を内線通話させたり、内線から外線へ発信したり、外線からの着信を振り分けたりする必要があります。従来はPBXと呼ばれる装置がこの役割を果たしてきました。

PBXとは「Private Branch exchange」の略で、日本語に訳すと「構内交換機・構内電話交換機」という意味です。

従来型のPBXは企業内に装置を設置していましたが、クラウドPBXではクラウド上に設置されたPBXをインターネット回線で接続して、PBXの代わりとして用います。

クラウドPBXの特徴的な機能を3点紹介します。

◇異なる場所の電話機同士を接続できる

従来型のPBXは同じ場所の電話機は接続できましたが、異なる場所の電話機は接続できませんでした。例えば、東京本社内の電話機同士は内線通話ができるものの、東京本社と福岡支社との内線接続はできません。

しかし、クラウドPBXは東京本社と福岡支社のように場所が異なるオフィスでも、インターネットがつながる場所であれば、どこでも接続できます。

◇スマートフォンなどとも接続できる

クラウドPBXは、従業員のスマートフォンなどとも接続ができます。利用するにはクラウドPBXで提供されているアプリをダウンロードして、スマートフォンにインストールするだけです。

スマートフォンとクラウドPBXが接続すれば、会社にかかってきた電話をクラウドPBXでスマートフォンへ転送することなどが可能になります。自宅でテレワークをしている従業員などに通話を転送したり、通話料無料の内線通話ができたりするため、便利です。

スマートフォンからクラウドPBXを経由して発信する場合は、スマートフォンの電話番号ではなく会社の電話番号が表示される点もメリットの一つです。

また、クラウドPBXには、スマートフォンだけでなくパソコンのソフトやブラウザからも接続できます。

◇付属機能が充実している

クラウドPBXは、従来型のPBXでは実現できなかった機能が充実しています。例えば、CTI機能です。CTIとは「Computer Telephony Integration」の略で、コンピュータと電話機の機能を統合させることを意味します。

CTIにはさまざまな機能があり、着信時に自動で顧客情報を表示する機能もその一つです。これはクラウドPBXを顧客管理ソフトなどと連携させて、電話の着信があると発信者の電話番号を自動検索してパソコンに表示させるものです。クラウドPBXを利用している従業員が、顧客管理ソフトで管理している情報を共有することもできます。その他、IVRと呼ばれる自動音声応答機能による勤務時間外での音声ガイダンス対応、自動で通話を録音する機能などがCTIには備わっています。

クラウドPBXを導入するメリット

クラウドPBXを導入するメリットは、どのようなものがあるのでしょうか。具体的には「同じクラウド上での通話が無料になる」「通信コストの削減」「契約してすぐ利用できる」ことが挙げられます。それぞれについて詳しく説明します。

◇同じクラウドPBX上のデバイス同士での通話は無料となる

クラウドPBXに接続した電話機同士は、内線通話が可能になります。テレワークで別々の場所で仕事をしている場合でも、クラウドPBXを介して内線としてつなぐことで、無料で通話が可能です。

オフィスが離れている場合でも有効です。東京と大阪のように離れた場所の営業所を内線としてつなぐ場合、従来は専用線などで接続する必要がありました。しかし、クラウドPBXではインターネット回線があれば特別な設備は必要ありません。手軽に拠点間の接続が可能になります。

◇電話にかかる通信コストを削減できる

クラウドPBXは、従来型のPBXと比べて大幅にコストを削減できます。まず、初期費用です。従来型のPBXは装置を購入して設置しなければなりません。PBXは小規模なものでも数百万円程度かかり、設置の工事費も必要です。また、社内には必要な数の固定電話機を用意しなくてはなりません。

しかし、クラウドPBXでは機器の購入や設置は不要です。スマートフォンと接続できるため、固定電話機も必要なくなります。

また、従来型PBXの場合は社外に出るとPBXに接続できなくなるため、法人携帯電話を契約して従業員が使用するケースも多いのではないでしょうか。この点についても、クラウドPBXであれば、スマートフォンを出先でも内線電話として使えるようになるため、法人携帯電話が不要になります。

先述したとおり、クラウドPBXは内線として利用できる範囲が広がります。テレワークをしている従業員のスマートフォンや、距離が離れた営業所間も接続できるようになるため、通話料無料で通話できる範囲が大幅に広がるでしょう。

さらに、従来型PBXや固定電話機、法人携帯電話は一定期間ごとに機器更新が必要ですが、クラウドPBXでは機器更新も必要ありません。

以上のように、クラウドPBXを使うと大幅に通信コストを削減できます。これから新たに電話システムを導入したい企業にとって、導入のハードルが低いでしょう。

◇契約してすぐに利用開始できる

従来型のPBXの場合、電話回線の工事などで利用開始まで1〜2ヵ月程度かかることもありました。その点、クラウドPBXは特別な設備や工事が必要ありません。契約して設定が完了すれば、最短で当日のうちには使用できるようになります。

また、クラウドPBXでは、企業規模の拡大などで従業員が増えた場合でも容易に対応できます。従来型のPBXの場合は、装置の入れ替えが必要になるなど、簡単にはコントロールできませんでしたが、クラウドPBXはライセンス式のため、従業員の増減があった場合でも容易に対応可能です。

クラウドPBXを導入するデメリット

クラウドPBXの導入には、メリットだけではなくデメリットもあります。おもなデメリットは「通話品質が安定しない場合がある」「特殊番号に電話がかけられない」「毎月のランニングコストが発生する」の3点です。それぞれについて詳しく説明します。

◇通話品質が安定しない場合がある

電話回線で通話する場合、基本的に通話品質は安定しています。しかし、クラウドPBXは電話回線ではなくインターネット回線を使用するため、インターネット回線やクラウドサーバーなどの影響により、通話品質が安定しない場合があります。

通話が安定しない場合は、プロバイダを変更したり、Wi-Fiを有線LANに変えたりすれば安定することもありますが、クラウドPBXのサービス自体の質が悪い可能性もあるでしょう。

サービスによっては無料体験期間が設けられていることもあるため、実際に使用してみて音声を確認しておくことが重要です。

◇特殊番号に電話をかけられない

クラウドPBXに接続した電話機からは、110番や119番といった緊急番号やサービスなどに電話がかけられません。かけられない番号として以下のものが挙げられます。

110:警察への事件・事故の急報
119:火事・救助・救急車
118:海上の事件・事故の急報
117:時報
177:天気予報
115:電報のお申し込み
144:迷惑電話おことわり
0570:ナビダイヤル

これらの番号のなかでも、緊急通報ができないといざというときに困るため、最寄りの警察署や消防署の電話番号を表示するアプリを導入するなどして備えておく必要があるでしょう。

ただし、これらは公的機関のアプリではないため、正確さは保証されません。頻繁に利用する地域では、自分で最寄りの警察署や消防署の電話番号を調べてアプリの情報が正しいか調べることも必要でしょう。

◇毎月のランニングコストが発生する

先述のとおり、クラウドPBXは従来型のPBXと比較すると導入コストを大幅に抑えられます。しかしその反面、月額費用がかかることがデメリットです。

月額費用がかかる代わりに、スマートフォンを内線電話として使えるようになることで通話料金を抑えられます。しかし、通話料金の削減分と月額費用のどちらが安くなるかは、ケース・バイ・ケースです。

月額費用は、サービスによってさまざまです。初期費用が安い場合は月額料金や通話料金が高めの設定になっている場合もあります。導入前にあらかじめ試算をしておかなければ、クラウドPBXの導入により、かえってランニングコストが高くなることもあるでしょう。

まとめ

クラウドPBXは従来型のPBXとは異なり、装置の設置や工事が不要で初期費用が抑えられます。また、クラウドPBX用アプリをインストールしたスマートフォンなどを接続することで、固定電話機や法人携帯電話も不要になります。今までは難しかった遠隔地との間でも内線通話が可能になり、通信コストを大きく抑えられるでしょう。

ただし、毎月の月額料金が必要になるため、企業によっては導入によりランニングコストが増大することも考えられます。そのため、事前にシミュレーションしてみることが必要です。

また、インターネット回線やサービス提供会社によっては、通話品質が安定しないこともあります。サービスによっては無料体験期間が設けられているため、導入する際には実際に試してみて通話品質を確認してみることも大切です。

令和2年度第3次補正 事業再構築補助金により作成