ひかり電話で音切れが発生する原因とは? ビジネスホン利用企業が確認すべき7つのポイント
「電話機は正常なのに音が途切れる」その原因はネットワークかもしれません
「相手の声が途中で聞こえなくなる」「こちらの声が届いていないと言われる」「会話がワンテンポ遅れる」。このような症状が発生すると、多くの企業は電話機やビジネスホン主装置の故障を疑います。
ひかり電話やクラウドPBXはIPネットワーク上で音声を送受信するため、電話機そのものではなく、LAN・ルータ・スイッチ・回線混雑などが原因になっていることが少なくありません。音声品質を安定させるには、電話機や主装置だけでなく、ネットワーク構成・優先制御・障害解析の仕組みまで含めて確認することが重要です。
本記事では、ビジネスホン利用企業が確認すべき7つの原因と、現場で実施しやすい対策を整理します。
IP電話はどのように音声を送っているのか
ひかり電話やIP電話では、音声をそのまま送るのではなく、小さな音声データに分割して送信します。音声通信では主にRTPというプロトコルで音声データを運び、SIPなどで発着信制御を行います。
重要なのは、データ通信と音声通信の性質が違うことです。メールやファイル転送であれば、多少遅れても最終的に届けば大きな問題にはなりません。一方、音声通信はリアルタイム性が重要です。遅れた音声パケットが後から届いても、会話としては利用できません。

図解説明
IP電話では音声がRTPパケットとして分割・転送されます。途中で遅延や欠落が発生すると、会話では「音切れ」「遅延」「ロボット音声」として現れます。 |
ひかり電話・ビジネスホンで音切れが発生する7つの原因
音切れの原因は一つとは限りません。実際の現場では、複数の要因が重なって品質低下が発生します。特に以下の7項目は、企業ネットワークで優先的に確認すべきポイントです。

図解説明
音切れの主な原因は、パケットロス、ジッタ、帯域不足、ONU直下の市販L2スイッチ、ルータ性能不足、Wi-Fi干渉、LAN機器老朽化の7項目です。 |
原因① パケットロス
パケットロスとは、本来届くべき音声データが途中で失われる現象です。回線混雑、スイッチ内部の輻輳、ルータ高負荷、不適切なQoS設定などで発生します。データ通信であれば再送できますが、音声通信では再送を待てません。そのため失われた部分がそのまま「音が途切れる」「一部聞こえない」という症状になります。FAX送信エラーや音声ガイダンスの乱れにもつながります。
原因② ジッタ
ジッタとは、音声パケットの到着間隔がばらつくことです。音声は一定間隔で届くことを前提に再生されます。到着タイミングが乱れると、ロボット音声、音飛び、会話の引っ掛かり、音割れが発生します。特にインターネットVPNやクラウドPBXを利用している環境では、経路の揺らぎによってジッタが発生しやすくなります。
原因③ 帯域不足
最近増えているのが、Web会議やクラウドサービスによる帯域圧迫です。Teams会議、Zoom会議、Windows Update、OneDrive同期、クラウドバックアップ、動画視聴などが重なると、音声通信に必要な帯域が確保できなくなります。重要なのは契約上の回線速度ではなく、実際に音声が使える帯域が残っているかです。
原因④ ONU直下の市販L2スイッチ
ONU直下に市販L2スイッチを設置し、そこからルータとビジネスホン主装置を分岐する構成では、音声通信とデータ通信が同じ分岐点を通ります。市販L2スイッチには音声優先制御がないため、大量バックアップやクラウド同期が始まると音声パケットが待たされ、音切れや遅延が発生する可能性があります。
さらに、ONU直下で使用するスイッチは通信事業者回線との分界点に関わるため、適合認定品でない市販L2スイッチを用いると、電気通信事業法上の適合性に抵触するリスクがあります。特に医療機関や調剤薬局では、オンライン資格確認、レセコン通信、FAXなども同時利用されるため注意が必要です。
原因⑤ ルータ性能不足
ルータは通信の交通整理を行う重要な機器です。CPU負荷上昇、セッション数不足、QoS未設定、古いファームウェアなどがあると、音声品質に影響します。回線を高速化しても、ルータが処理しきれなければボトルネックになります。
原因⑥ Wi-Fi利用による影響
スマートフォン内線やクラウドPBXアプリをWi-Fiで利用する場合、電波干渉、電波強度不足、チャンネル競合、アクセスポイントの過負荷が音声遅延の原因になります。固定電話機では問題がなくても、スマートフォン内線だけ音質が悪い場合はWi-Fi環境を確認する必要があります。
原因⑦ LAN内のボトルネック
古い100Mbpsスイッチ、劣化したLANケーブル、過去の配線を流用した構成、ループやブロードキャスト増加なども原因になります。光回線を10Gbpsへ高速化しても、社内LANが古いままでは十分な効果を得られません。

図解説明
NG例では、ONU直下の市販L2スイッチからルータとビジネスホンへ分岐します。この構成は音声優先制御がなく、適合認定品でない市販L2スイッチをONU直下で使う場合は電気通信事業法上の適合性リスクもあります。 推奨例では、Voiceスイッチ/クラウドアクセススイッチにより電話系とデータ系を分離します。音声を保護し、障害時の切り分けも容易になります。 |
音切れを防ぐための具体策
音切れ対策では、原因を推測して機器交換するのではなく、通信を可視化し、音声通信を保護する設計へ見直すことが重要です。
① パケットキャプチャを実施する
SIPやRTPの流れを確認し、発着信制御の問題なのか、音声パケットの問題なのかを切り分けます。
② ミラーポートを活用する
障害時の通信を複製して確認できます。再現性の低い音切れの解析に有効です。
③ 音声とデータを分離する
Voiceスイッチなどを用いて電話系とデータ系を分けることで、大量通信の影響を受けにくくします。
④ QoSを活用する
QoSは通信優先制御です。音声通信を優先することで、通話品質を安定させます。
音声品質を評価する指標:MOS値とR値
音声品質を定量的に評価する代表的な指標として、MOS値とR値があります。MOS値は体感的な音声品質評価、R値はE-modelで用いられる伝送品質評価指標です。ITU-T G.107ではE-modelが規定され、TTCのIP電話通話品質測定ガイドラインでもG.107を基礎とした考え方が示されています。
一般的には、MOS値4.0以上、R値80以上で良好、MOS値3.5以上、R値70以上で実用レベルとされることが多く、FAXや音声ガイダンスを重視する環境ではより高い品質を確保する設計が望まれます。

図解説明
MOS値とR値は音声品質の目安です。電話だけでなく、FAXや音声ガイダンスを重視する環境では、より高い品質を保つ設計が重要です。 |
現場で確認すべきチェックリスト
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確認項目 |
見るべきポイント |
主な対策 |
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回線混雑 |
昼休み・夕方だけ悪化しないか |
通信量の可視化、時間帯別確認 |
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パケットロス |
RTP欠落やFAX失敗がないか |
キャプチャ、経路見直し |
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ジッタ |
ロボット音声・音飛びがないか |
QoS、経路安定化 |
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ONU直下構成 |
市販L2スイッチで分岐していないか |
音声とデータの分離 |
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ルータ負荷 |
CPU・セッション数・QoS設定 |
機器更新、設定見直し |
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Wi-Fi |
スマホ内線のみ悪化しないか |
AP配置、チャンネル調整 |
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LAN老朽化 |
100Mbps機器や古い配線 |
スイッチ・ケーブル更新 |
図解説明
チェックリストでは、時間帯別の回線混雑、RTP欠落、ジッタ、ONU直下構成、ルータ負荷、Wi-Fi、LAN老朽化を順番に確認します。 |
Voiceスイッチ・クラウドアクセススイッチという考え方
ビジネスホンを継続利用する企業では、音声通信を安定させるためにVoiceスイッチが有効です。音声優先制御、ミラーポート、電話系とデータ系の分離により、音切れ対策と障害解析を同時に進められます。
「PS-52Jplus」はVoiceスイッチとして、「PS-72Jplus」・「PS-73Jplus」はクラウドアクセススイッチとして、ひかり電話・ビジネスホン・データ通信の共存環境で活用できます。
「PS-52Jplus」: 光回線専用ミラーポート付Voiceスイッチとは
「PS-72Jplus」・「PS-73Jplus」: クラウドアクセススイッチとは

よくある質問(FAQ)
■回線速度を上げれば解決しますか?
必ずしも解決しません。契約速度よりも、実際に音声が使える帯域、QoS、LAN構成が重要です。
■10Gbps回線なら音切れしませんか?
10Gbpsでも構成が悪ければ音切れは発生します。ONU直下の分岐、ルータ性能、社内LANのボトルネックを確認してください。
■電話機を交換すれば改善しますか?
原因がネットワーク側であれば改善しません。まずパケットキャプチャや切り分けを行うべきです。
■FAXエラーも同じ原因ですか?
はい。FAXも音声系通信の影響を受けるため、パケットロスやジッタ、遅延が問題になる場合があります。
■クラウドPBXでも同じ考え方ですか?
同じです。クラウドPBXはネットワーク品質の影響をより受けやすいため、音声とデータの分離やQoSが重要です。
■市販L2スイッチではだめですか?
小規模環境で一時的に問題が出ない場合もありますが、ONU直下で市販L2スイッチからルータとビジネスホンを分岐する構成は、音声優先制御がなく、音切れや障害切り分けの課題が残ります。また、適合認定品でない市販L2スイッチをONU直下に設置する場合は、電気通信事業法上の適合性に抵触するリスクがあるため、企業用途では専用機器を選定することが重要です。
■ONU直下の市販L2スイッチは法令上も問題になりますか?
ONU直下で回線を分岐する機器は、通信事業者回線との分界点に関わるため、適合認定品でない市販L2スイッチを使用すると、電気通信事業法上の適合性に抵触するリスクがあります。音声品質だけでなく、コンプライアンス面からも専用機器の利用を検討することが重要です。
関連記事・引用リンク
- ONU直下L2スイッチはなぜ問題になるのか?(責任分界点・適合認定)
- ONU直下のHUBはコンプライアンス違反?知らずに違法利用しているケースとは
- ONU直下のHUB利用の落とし穴|正しい機器選定ガイド
- IPv6 IPoE通信機能装備「クラウドアクセススイッチ」とは
- IPv6 IPoE通信機能装備「クラウドアクセスゲートウェイ」とは
- 参考:
JATE 電気通信端末機器 技術基準適合認定等制度 Q&A
JATE 技術基準適合認定 Q&A 21. Ethernet機器の認証
まとめ
ひかり電話やビジネスホンの音切れは、電話機や主装置だけの問題とは限りません。パケットロス、ジッタ、帯域不足、ONU直下構成、ルータ性能、Wi-Fi環境、LAN機器老朽化など、ネットワーク全体を確認する必要があります。
特に企業ネットワークでは、音声とデータを適切に分離し、QoSやミラーポートを活用することで、安定した通話品質と障害解析のしやすさを両立できます。音切れは「電話の問題」ではなく「ネットワーク品質の問題」と捉え、早めに構成を見直すことが重要です。


